ウクライナでの戦争が続いている中でイスラエルとハマスとの戦争が起きてしまいました。大国は自国第一主義を標榜し、他国を顧みることが少なくなくなりました。世界はますます混迷の度を深めています。神学者の木田献一氏は35年前の1988年に次のような警鐘を鳴らしました。
『果たして現代の人間に希望は残されているのだろうか。神のようになろうとした人類は、すでに何度となく大洪水のような災害を経験してきた。しかし、人類は相変わらず同じような過ちを繰り返している。人間の世界はあまりにも集中化し巨大化した富と権力の支配の下に、破滅への道をまい進するほかないのだろうか。
しかし、このような危機感は遠く旧約の人々が経験していたことである。そのような混乱の中から、神は信仰の先祖アブラハムを呼び出された。「信仰によってアブラハムは行き先も知らずに出発した」(ヘブ11:8)と言われている。富と権力の支配の下に自分の言葉を失ってしまった世界を後にして、各人が神の言葉を聞き取り、それぞれ自分の言葉を語り合って、人間と人間が再び愛し合い、助け合う世界を回復するためにアブラハムは旅だったのである。
このような旅立ちの可能性は、もはや現代の我々に残されてはいないのだろうか。我々はバベルの塔の下に安住するのではなく、自分の言葉を取り戻す新しい旅への歩みを踏み出さなければならないのである。』
私たちが、いつの時代も同じだと考えるか、神の言葉を聞いて自分の言葉を取り戻そうとするかに未来がかかっているように思います。