神学生時代に実習教会で出会った親友に勧められて『桜色の風が咲く』という映画を見ました。9才で失明し18歳で聴力を失った智君とその家族の実話を元にした映画です。智君は3歳4カ月で右目を失明、その後、左目もだんだん見えなくなって10歳で全盲となりました。「神様はいるのかなあ。ぼくはナンニモ悪いことしてへんのに、だんだん目が悪くなるねん。」と言う智君の言葉を聞く母親の辛い気持ちが伝わってきます。さらに18歳で聴力が低下してきて19歳直前に両耳が聞こえなくなりました。見えず聞こえない世界は、現実には有っても、それが無い世界なのだそうです。
聴力も失い絶望の底にいる彼をただ黙って抱擁する盲目の人がいました。その人は泣いていました。そして智君は「本当の神があるのなら、苦しめてばかりもいない。僕をこのようにしたからには、何か大きな意味があって、僕に何かを託しておられるのではないかと思えてならない」という思いに達したのです。『人間は欠如体である。実を結ぶためにはおしべとめしべだけではなく風や蜂が必要なように』というナレーションの言葉が重なります。彼は光と音を失っても、友がいて、コミュニケーションもできることを発見しました。
「神はおられる」。このことは欠如を補う無償の愛と共に伝わるのだと思わされました。良いクリスマスをお迎えください。