3月19日牧師室より

レントの時期になると思い出す絵本があります。ラーゲルレーヴの『むねあかどり』です。むねあかどりはヨーロッパコマドリのことで、顔から胸にかけて赤い色をしています。その由来は…。

神さまが世界を造られた時に小鳥たちの羽を色とりどりにお造りになりました。むねあかどりを造った時に神さまは「お前の名前はむねあかどりだ」とおっしゃいました。でも体じゅう灰色でした。むねあかどりは胸に色がつくためにいろいろな努力をしましたが灰色のままでした。

それから長い年月が経ったある日、いばらの冠をかぶって歩いている人を見ました。血がにじみ、苦しそうに息をしているその人はとてもやさしそうな人でした。その光景をこわごわ見ているうちにむねあかどりは堪らなくなりました。むねあかどりはその人のところに飛んでいき、いばらのとげを一本いっぽん引き抜きました。すると一滴の血が胸に散って胸を赤く染めました。それ以来、むねあかどりの胸の毛は赤くなりました。

私はこの本を飲んだ時に胸が熱くなりました。この鳥の努力は人間が清くなろうと努力してもどうにもならないで諦めたり失望しているのと同様に思えました。ところが鳥がイエス様に近づきその血を受けた時に本来の美しさを与えられたように、私たちもイエス様に近づいた時に本来の清さを与えられるのだと思えたのです。十字架の救いを信じるならば希望は消えません。